レーザー加工プロセスの理論的研究
超短パルスレーザー加工に関する大阪大学レーザー科学研究所との共同研究では、近赤外の超短パルスレーザーを用いた微細加工プルセスのシミュレーション手法の高度化を進めている。マイクロメーターの加工精度を実現するには、レーザーで注入されたエネルギーの熱伝導による拡散を極力避けることが必要である。マイクロメーターの空間スケールでは熱伝導の時間スケールは数ピコ秒であり、マイクロメーターの微細加工用レーザーのパルス幅は、ピコ秒もしくはサブピコ秒となる。このような超短パルスレーザー加工では、レーザーの吸収は厚さ数十nmの層で生じ、過渡的に超高圧が発生し気体・液体・固体相の圧縮膨張が超音速で進行することにより、加工面はピコ秒のオーダーで変化する気・液・固体の混相状態になる。このような、混相状態と超短パルスレーザーとの相互作用をモデル化し、正確なレーザー吸収の時間空間変化をシミュレーションに反映することが重要である。
本研究では、レーザーの吸収過程とその後の輻射流体運動の結果である、アブレーションや溶融層の生成と凝固を記述する統合シミュレーションコードを開発し、レーザー微細加工の最適化とCPSの構築に資することを目指す。統合シミュレーションコードの開発において、極めて重要な役割を果たしている混相状態とレーザーの相互作用の物理を解明し、モデル化することにより、色々な照射条件での超短パルスレーザー加工に適用可能なシミュレーションコードの開発を目指す。本年度は、固体とレーザーの相互作用の初期過程の解明に注視した。固体は原子が結晶構造を組んでおり、電子の波動関数に周期性が表れ、バンド構造を形成する。結晶中の電子の波動関数は、ブロッホの定理で表される関数形を持つ。