研究紹介

STUDY

理論・シミュレーションチーム

MEMBER

メンバー紹介

所長 井澤 靖和
研究員 古河 裕之

チーム紹介

研究紹介

レーザー加工の物理的解明のため、理論・シミュレーションにより評価・解析する研究や地震の予知を目的として、地震先行現象が電離層に及ぼす効果を理論的に研究しております。

 

レーザー加工プロセスの理論的研究

 超短パルスレーザー加工に関する大阪大学レーザー科学研究所との共同研究では、近赤外の超短パルスレーザーを用いた微細加工プルセスのシミュレーション手法の高度化を進めている。マイクロメーターの加工精度を実現するには、レーザーで注入されたエネルギーの熱伝導による拡散を極力避けることが必要である。マイクロメーターの空間スケールでは熱伝導の時間スケールは数ピコ秒であり、マイクロメーターの微細加工用レーザーのパルス幅は、ピコ秒もしくはサブピコ秒となる。このような超短パルスレーザー加工では、レーザーの吸収は厚さ数十nmの層で生じ、過渡的に超高圧が発生し気体・液体・固体相の圧縮膨張が超音速で進行することにより、加工面はピコ秒のオーダーで変化する気・液・固体の混相状態になる。このような、混相状態と超短パルスレーザーとの相互作用をモデル化し、正確なレーザー吸収の時間空間変化をシミュレーションに反映することが重要である。
 本研究では、レーザーの吸収過程とその後の輻射流体運動の結果である、アブレーションや溶融層の生成と凝固を記述する統合シミュレーションコードを開発し、レーザー微細加工の最適化とCPSの構築に資することを目指す。統合シミュレーションコードの開発において、極めて重要な役割を果たしている混相状態とレーザーの相互作用の物理を解明し、モデル化することにより、色々な照射条件での超短パルスレーザー加工に適用可能なシミュレーションコードの開発を目指す。本年度は、固体とレーザーの相互作用の初期過程の解明に注視した。固体は原子が結晶構造を組んでおり、電子の波動関数に周期性が表れ、バンド構造を形成する。結晶中の電子の波動関数は、ブロッホの定理で表される関数形を持つ。

地震先行現象の物理メカニズム研究

 レーザー技術総合研究所では、大阪大学大学院理学研究科、(株)コンポン研究所と共同で、地球上の非定常電荷が電離層に及ぼす影響の研究を行っている。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)において、北海道大学の日置により、地震発生40分前から震源上空の電離層総電子数(TEC:Total Electron Content)の増大があったことが報告された。測位衛星から地上局に向けて発する電波が、電離層電子によって遅延を受けることを利用し、その視線方向の総電子数を算出する手法(GPSTEC法) を用いて見いだされた現象である。日置は、1994年から2015年までのマグニチュード8級以上の地震について震源上空のTECを解析し、磁気嵐の時期を除いて、過去18回のすべての例で地震発生直前数十分以内においてTEC異常があったことを示した。この現象を説明できる物理モデルはまだ存在しておらず、根拠となるモデルの構築が求められている。日置テックの原因については、大気力学的、放射性ガスの拡散など諸説ある。しかし、我々は、大地震直前に発生して観測されるという時間的なことから、地球電離層間の電磁気的な作用が原因であると考えている。観測面では地震と関係ない類似の現象と区別するには、今のところ解析に時間がかかる。
本研究において、現象のモデル化とそれを記述できる基礎方程式の導出、シミュレーションコードの開発を行った。開発したシミュレーションコードを用いて、様々な地球上の非定常電荷分布に対して、シミュレーションを行い、電離層への影響を評価した。シミュレーション結果は、日置の測定結果と良い一致を示している。

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