テラヘルツ光源開発
テラヘルツ波とは、周波数にして0.1THz~数十THzの電磁波を指し、ミリ波と遠赤外光の中間に広大なスペクトルを占めている。テラヘルツ技術は、 ますます増大する情報通信需要とユビキタス社会の実現に向けた無線ネットワークの必要性からギガビット級シームレス高速無線ネットワークの実現に向けた近い将来基幹技術と捉えられている。 一方、テラヘルツ波は電波の透過性と光の直進性という両方の特長を兼ね備えており、さらにDNAや蛋白質などの生体物質や特定の科学物質がこの領域に吸収スペクトルを持つことから 透過イメージングを含めた生体検査や診断、農作物検査、危険物検査などへの応用が可能である。
我々はテラヘルツ領域においてスミス・パーセル超放射光のメカニズム解明とその大出力化について研究を行ってきた。理論解析・シミュレーションと実験検証により、 電子ビームと電磁波との相互作用と超放射光のスペクトル特徴を解明した。尚、スミス・パーセル放射と共に表面波 (evanescent wave) 放射も同時に起こることを明らかにし、 表面波スペクトル特徴を予言した。装置の性能を改善するために、新しい機構を提案した。
図1に示すように、この放射機構は二段グレーティングで構成され、グレーティングの周期長、溝の幅、溝の深さなどそれぞれ異なる。 電子ビームはグレーティングの表面を通過し、一段目グレーティングの表面波と相互作用をすると、繰り返しバンチになる。 バンチ化した電子ビームは二段目グレーティングでスミス・パーセル超放射を引き起こすことができ、垂直の方向により一定の角度で放出される。放射角度は電子エネルギー、 グレーティングの周期長、放射周波数などに関連する。
電子ビームは金属グレーティングの直上に通過する際、表面波が起こられる。この表面波はグレーティングの表面に伝播してグレーティングの両端で部分的に反射する(図2)。 これにより、表面波は徐々に増大され、電子ビームと強い作用ができると装置が発振できてスミス・パーセル超放射が放出する。ただグレーティング両端の反射だけに任せば反射率は低いから、 我々はブラッグ反射機構を用いたグレーティングを提案した。この機構は図2に示すように、メーングレーティングの両端にブラッグ反射グレーティングを置き、 このグレーティングの周期長や長さなどがブラッグ条件に満たしたら反射率が増やすことができ、装置の効率が向上することが望まれる。