レーザー装置の利用可能なエネルギーは、使用される光学部品がレーザー光に対して損傷を起こさないエネルギー強度、 “レーザー損傷閾値(DT:Damage Threshold)” で決定されます。このDTを基準として、レーザー装置の出力エネルギーを制限しなければなりません。 レーザー技術総合研究所では、永年、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターと共同で、大出力レーザーの開発、それに使用される光学素子の開発を行ってきました。 そこで培われた光学素子のレーザー損傷の評価技術を広くメーカー、ユーザーの皆様に提供します。
基本的な損傷閾値の評価方法に、1ヶ所に1回 (1パルス) 照射を行い、場所、照射エネルギーを変えて繰り返し試験をする方法、 1-on-1 があります。
Nd:YAGレーザー発振器(波長1064nm、パルス幅10ns)から出力されたレーザーパルスは、増幅器ユニット内でパルス幅を調整された後、YAG増幅器1台で増幅されます。
その後、レーザーパルスは長焦点レンズで試料上に集光され損傷を評価します。 試料上の照射強度は、ビームの一部を取り出し、エネルギーメータと試料上のビームをイメージしたCCDカメラにて測定します。
レーザー照射前後に試料表面を観察することにより損傷の有無が確認され、Fig. 2のように、照射強度に対して損傷・非損傷がプロットできます。 最終的に、レーザー損傷閾値は、赤線のように、確実に損傷が発生しない最大照射強度として定義されます。 試料上のビーム強度分布はガウス分布であり、損傷閾値付近における損傷はガウス分布の中心(尖頭値)で発生するため、ここで、エネルギー密度Fは、1/e2のビームサイズで定義される平均エネルギー密度の2倍として表されます。
その他の損傷試験
1-on-1照射試験以外に、
- 1ヵ所に特定の回数照射を行い損傷を確認する S-on-1
- レーザーコンディショニング効果を評価する N-on-1(またはR-on-1)
なども国際的に使用されています。更には、長時間の照射に対する透過率や反射率の変化を測定し、劣化や寿命を評価することも行っています。 Fig. 3は繰返し100Hzのレーザーパルスを約1時間照射した時の試料の反射率の変化を示したものです。 1-on-1照射試験で得られた損傷閾値の80%の照射強度では、損傷は発生しないが光学特性が変化することが確認できます。
レーザー損傷形状
御要望にお答えし、光学顕微鏡や、原子間力顕微鏡による損傷形状の測定も開始しました。お問い合せ下さい。
EVALUATION DEVICE
評価装置一覧
Wave length (nm) | Pulse width (ns) | Max freq. (Hz) | Irr. size (mm) | Power / Energy | ||
---|---|---|---|---|---|---|
Single mode Nd:YAGレーザー |
ω | 1064 | 10 | 0.5 | 330 mJ | |
2ω | 532 | 7 | Single | 0.32 | 35mJ | |
3ω | 355 | 6 | 0.3 | 23mJ | ||
Rep. pulse 繰り返しNd:YAGレーザー |
ω | 1064 | 3.5 | 1 | 25W | |
2ω | 532 | 3 | 100 | 0.5 | 10W | |
3ω | 355 | 3 | 0.5 | 7W | ||
CW 連続発振Nd:YAGレーザー |
ω | 1064 | CW | 0.7 | 8W | |
2ω | 532 | 5000 | 0.11 | 1.32 mW | ||
UV エキシマレーザー |
ArF | 193 | 50 | 80 | 1.4 | 80mW |
KrF | 248 | Multi mode | 130mW |
EVALUATION METHODS
評価方法一覧
テスト | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
1-on-1 | 1ヵ所に1回照射を行い損傷の有無に関わらず場所を変え試験を繰り返す。 | 損傷閾値測定 |
S-on-1 | 1ヶ所に特定回数照射を行い損傷を確認し移動する。 | 実際に使用される状況下に近い損傷閾値測定 |
N-on-1 | 1ヶ所に損傷が生じるまで断続的に照射強度を上げ、照射毎に損傷の有無を確認する。 | レーザーコンディショニング効果の評価 |